(株)リクルートプラシス訪問レポート1
日時:平成17年1月13日(木曜)10時30分〜12時30分
場所:東京都中央区勝どき リクルート勝ちどきビル
同行者:山口、土公、児玉
特例子会社の先進事例の調査と現地の見学を兼ねて、NPO法人自立就労支援機構「未来」(代表 山口和子、以下「未来」)のメンバー3人で株式会社リクルートプラシス(代表取締役:島 宏一 資本金1億円、以下プラシス)を訪問した。
プラシスは株式会社リクルートが障害者雇用の特例子会社として設立。全従業員数108名のうち、64名が障害者である(平成16年12月1日現在)。
特例子会社とは障害者の雇用に配慮あるいは特化した子会社であり「障害者雇用促進法」で定義されている。企業等法人は一定の割合の障害者を雇用する義務(法定雇用率)があるのだが、設備環境の面で障害者の受け入れが厳しいのが現状だ。
その解決策として、障害者雇用に特定の要件を満たした子会社を設立し、そこで雇用した障害者を本体の法定雇用率に組み込めるようにした。わざわざ「特例」子会社の制度があるということは、逆に言えば、普通の子会社で障害者を雇用しても親会社の法定雇用率にはカウントされないということだ。(障害者の雇用義務は個々の事業主に課せられる。)
プラシスの設立は比較的古く、平成2年2月である。
特例子会社としては平成2年5月に承認されており、全国で31番目の特例子会社だ。
ちなみに、宮崎県内の特例子会社としては(株)旭化成アビリティ(親会社:旭化成(株)、承認:昭和61年、20番目)と(株)グリーンフラッシュ(親会社:(株)コスモス薬品、承認平成16年5月、148番目)などがある。
また、「未来」の前身である「みやざき福祉マップ」のメンバーが訪問、見学した、福岡県の(株)サンラインは(株)ゼンリンの特例子会社(承認平成4年4月、41番目)だ。
プラシスではまず、概要や案内についてプレゼンを行なって頂いた。プラシスからは経営企画室の加瀬氏、広報担当の近藤氏にご対応頂いた。
プラシスの事業内容はリクルート及びリクルートグループの事務処理サービスで、その内訳は社内印刷物の印刷や製本、名刺作成、データ入力経理、総務サービスの代行などとなっている。
おもしろいものとしてグループ従業員に対する鍼・灸・マッサージサービスの提供というのがある。この事業については、あん摩・鍼・灸の国家資格を取得した視覚障害者を採用・配置している。
プラシスの売上高は平成15年度の実績で18億3,566万円である。雇用されている障害者の障害部位は様々であり、こだわることなく雇用を受け入れている(身体、内部、知的など)。そのため、作業の平準化が難しく、また能力のバラツキも大きいそうだ。
障害者各人は能力や希望などにより社内の様々な部署に配置される。例えば聴覚障害者は健常者よりも騒音への耐性が強く、稼働音の大きな印刷機のそばで働いても疲労が少ないので印刷関係の部署に配属される。
プラシスでは、障害の有無による仕事の区別はしないが、車いすでは届かない位置のものを立位の者がとるなどの手助けは当然必要になる場合がある。また、健常者と障害者では仕事の進み方が違う。これに起因するトラブルや問題点はないかと尋ねたところ、プラシスで採用された健常者はもともと特例子会社と認知して就職されたかた達なので障害者に対する理解は深くとくに問題はないとのことだ。
プレゼンの後は実際の現場を見学させて頂いた。
プラシス本社はリクルートの所有するビルに所在し、建物の地階から4階を占有している。
様々なバリアフリーの設備があり、トイレなどの水回りの大きな改造もされているが、これは、親会社の物件のため改造しやすかったそうだ。
各設備はそれぞれ工夫がされていて、車いすのまま屈伸のできる設備(これは気分転換などのためではなく、じょくそう対策のためだそうだ)や、車いすでも喫煙しやすい、高さの低い吸煙テーブルの設置された喫煙室やスキャナー部と印刷部を分離し低く設置したFax・コピー機などいろいろ工夫のされた設備を見かけた。
ビル外部には滑面がローラー式になっている巨大なスロープがある。これは、緊急時に車いすのかたが車いすを置いてから下に避難できる装置なのだが、車いす利用者がひとりで使うにはいくつかの対策を講じる必要がある。
印刷の現場では機械が多く、注意を怠ると重大な事故を招く可能性もあるため、様々な工夫がされていた。例えば、作業指示は分かりやすく色分けしてあったり、裁断機は巻き込み防止のため両手でスイッチを押さないと作動しないなど。
部屋の出入り口にはカーブミラーが設置されている。出会い頭の事故を防ぐためで、健常者では音などの気配で気づくのだが聴覚障害者は気配を察知しづらいため、このミラーで目視確認をするそうだ。こういった細かな工夫が細部に渡って施され、要所要所で「未来」メンバーの感心感嘆の声が上がる。
ある社員の作業場では意思表示のためのカードが置かれていた。この社員は知的障害によるコミュニケーションハンディがあり、作業が終わった際、「終わった」としか伝えない傾向があるため裁断が終わったのか、梱包が終わったのかといった区別が付かなかったのだが、このカードのおかげで確実に伝達ができるようになった。これらの工夫は運用しながら徐々に蓄積されたそうだ。
これら各設備の様子については別掲の写真で確認して頂きたい。
最後に、ご多忙中時間を割いて、宮崎くんだりから押しかけてきた海のものとも山のものとも分からぬ(どちらといえば海のものではある)我々に対して、親切丁寧なご説明を頂いた、加瀬氏、近藤氏、プラシスの社員のかたに心から感謝の意を表したい。
(株)リクルートプラシスホームページ
http://www.z.recruit.co.jp/plasis/
(文責:児玉)